先日、11歳の次男と6歳の娘を連れて、関内の大戸屋に入りました。
席に着くとタブレットで定食を注文し、料理が運ばれてくるのを待ちます。
そのとき、注文用のタブレットから動画が流れ始めました。
農家さんがお米を作る様子や、大戸屋が食材づくりから大切にしていることを紹介する動画でした。
私は何気なく見ていたのですが、その動画が次男に刺さりました。
「この店、いい会社なんだね」
そう言って店名を確認し、運ばれてきたホッケ定食を本当においしそうに食べていました。
お店を出たあとも、
「大戸屋好き」
「今度も大戸屋に行きたい」
と話していました。
もしあの動画がなかったら、どうだったでしょう。
きっと「おいしかったね」で終わっていたと思います。
でも、そのお店がどんな思いで食材と向き合っているのかを知ったことで、次男の中で大戸屋は、単なる定食屋ではなくなりました。
「また行きたいお店」になったのです。
反対に、素敵な世界観を持っているのに、その背景を持ち帰れなくて少し残念に感じた経験もあります。
私には好きな化粧品ブランドがあります。
出会いは小淵沢のホテルでした。
部屋に置かれていた化粧品を何気なく使ったとき、その香りに驚きました。
「これは、きっと普通の化粧品じゃない」
そう思って会社名を調べた経験があります。
先日、そのブランドの店舗に立ち寄る機会がありました。
店員さんにリップを選んでいただきながら、商品のことや会社のこと、創業者のことなど、たくさんのお話を聞きました。
どれも興味深くて、ますますそのブランドが好きになりました。
だからこそ、
「今日聞いた話を、家に帰ってからもう一度読みたいな」
と思ったのです。
そのブランドの世界観や、商品が生まれた背景を持ち帰りたかった。
でも、お店にあったのは商品を紹介するパンフレットだけでした。
もちろんそれも大切です。
けれど私が持ち帰りたかったのは、商品の説明ではなく、その奥にある物語でした。
人は商品だけを好きになるわけではない。
私はそんなふうに感じています。
誰が作ったのか。
なぜ作ったのか。
どんな思いがあるのか。
そうした背景に触れたとき、その商品やサービスは単なるモノではなくなります。
そして「また会いたい」「また行きたい」「また買いたい」という気持ちが生まれるのだと思います。
だから私は、ストーリーブックを作っています。
写真を撮るだけでもなく、
文章を書くためだけでもなく、
人やブランドの背景にある物語を、誰かが持ち帰れる形にしたいからです。
こちらは、石鹸工房エレナフローラさんのために制作したストーリーブックです。
良質な素材とアロマオイルを使い、時間と手間をかけて作られるコールドプロセス製法の石鹸。
商品そのものの魅力はもちろんですが、それだけでは伝わりきらないものがありました。
なぜこの素材を選ぶのか。
なぜこの製法にこだわるのか。
なぜ石鹸づくりを始めたのか。
ストーリーブックでは、そうした背景まで含めて届けることを大切にしました。
ページの最後には、石鹸工房を立ち上げた女性が、なぜ石鹸づくりに取り組んだのか、どうやって難しい資格取得を実現したのか、人物ストーリーも掲載しました。
こうすることで、エレナフローラの石鹸を手にしたお客さまが、さらにこの石鹸を好きになり、この石鹸を使う自分のことも好きになれる、そんな役割を担ってほしいと思いながら作成しました。
いま私のもとには、新たなストーリーブックのご相談が届いています。
その方は、
「Instagramでは流れていってしまう思いや背景を、まとめられたらいいのにと思っていた」
と話してくださいました。
本当にそうだと思います。
情報があふれ、次々と流れていく時代だからこそ、
手に取り、
読み返し、
誰かに手渡すことのできる物語には価値がある。
ストーリーブックは、商品を説明するための冊子ではありません。
人やブランドへの共感を持ち帰り、自分の世界とつなぐための一冊なのだと思っています。

