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紙の冊子を大切にしたい

先日、特急あずさに乗って甲府に行きました。

目的は印刷の立ち合いと印刷工場の見学です。

 

この印刷媒体と紙製のグッズを作られている印刷会社、お好きな方はすぐにわかることでしょう。

印刷って、想像以上に職人さんの丁寧な作業が必要な作業なんですよね。

同じ印刷データを流しても、同じ印刷物があがるわけではありません。

同じインクを使っても、その日の気温、湿度によっても色合いが変わるし、同じ紙を使っても、納品されてすぐなのか、しばらく経過した紙なのかによって仕上がりの色味は変化します。

 

印刷機を回してみて、職人さんが細かく細かく微調整して、同じ色味を再現していく。職人技です。でも職人さんのシフトで仕上がりが変わっては困るので、誰がやっても同じように仕上がるように、様々な工夫がされています。

私がはじめて印刷工場の見学に行ったのは、社会人になってすぐだったと思うので、もう20年以上前のことになります。

 

この20年の間に、情報発信手段は、ものすごく変わりました。

 

1990年代終盤の美大在学中は、まだまだホームページもない会社があるくらい、紙媒体が主流でした。

2001年に就職した事業会社で広報となった際も、紙のカタログ、紙の価格表、紙のパンフレットなど、紙媒体をたくさん作ったものです。

 

知識がないなかで何とか写真を撮りIllustratorで印刷データを作っていたのですが、わからないことが多く、当時の印刷会社の営業さんに教えてもらいました。

 

画素数が足りないと画像がぼけてしまうこと、

RGBの画像のまま入稿する色がくすむこと、

トンボがないと裁ち落とせないこと、

紙にはマット紙、コート紙、上質紙があり、それぞれに特性があること、

色校正で確認すべきこと…

 印刷はWEBに比べ、とても手間もかかるし、ミスをしたら直せないのでプレッシャーもあります。

 

でも、手間暇をかけて作る紙の印刷物が、私は好きです。

 

紙の質感、インクのにおい、

気に入ったページはなんどもめくるからそのページだけ跡が残り、

挿絵と文字と紙と印刷がセットになって、いつまでも記憶に残る。

 

情報が大量に溢れ瞬間で消費されていく世の中だからこそ、これから改めて、印刷された媒体が求められていく場面があるように感じます。

写真も文字も好きな記録オタクの私は母親になって17年、ずっとプライベートな写真はフォトブックにして残してきました。

スマホやPCのなかにたまっていくだけの写真と、そのときどんなことがあったのかを説明する文字と一緒に印刷されたフォトブックの写真とは、味わいが違ってきます。

本って、そのページのレイアウトだけでなく、前後のつながり、本の前側、後ろ側のどのあたりかなど、一度に色々なことが記憶に残りますね。

 

手に取って眺められる印刷物の情報が脳内に蓄積される工程と、タブレットなどの端末で記憶した情報が蓄積される工程は違うのかも?

AIにより情報処理能力はどんどん上がり、目の前を通り過ぎていく情報の速さは、この20年で本当に、別次元のように多く、速くなりました。

 

検索したりリンク付けしたりできるデジタル情報はとても便利です。でも、どんなに時代が変わっても、しっかりと手に取って味わうべき情報があるはず。そう信じて、これからも丁寧に紙媒体を作れる人間でいたいな。

 

そんな思いが改めて胸のなかに芽生えた、久しぶりの印刷工場見学でした。